【目次】
- 1. フォトリソグラフィーとは
- 2. フォトリソグラフィーの工程
- 3. フォトリソグラフィーの課題
- 4. フォトリソグラフィーの代替技術となる3Dプリンタ
- 5. BMFの高精度3Dプリンタによるフォトリソグラフィーの代替例
- 6. フォトリソグラフィーとは?まとめ
高精度で複雑な造形が可能な3Dプリンタの開発により、用途が広がっています。フォトリソグラフィーの代替技術としての活用も、3Dプリンタに期待されている用途の一つです。フォトリソグラフィーは、電子部品の製造などを中心にさまざまな製品の加工法に用いられています。この記事では、半導体製造関連で重要な役割を担っているフォトリソグラフィーの原理や工程、また代替技術となり得る高精度な3Dプリンタ製造技術に関して紹介します。
1. フォトリソグラフィーとは
フォトリソグラフィーとは、フォトレジストとよばれる感光剤を塗布したシリコン基板などの表面に、意図したパターンとなるような紫外線などの照射を行うことで、露光部分とそれ以外で構成される回路などのパターンを生成する技術です。
半導体製造プロセスにおける微細な加工が必要となる中で、フォトリソグラフィーの技術開発も進んでいます。現在は、数十ナノメートルという微細なパターンでの生成が可能になっています。
フォトリソグラフィーの主な用途
フォトリソグラフィーは、さまざまな用途に用いられています。
例えば、半導体デバイスなどの電子部品の製造。また、パターン化された金電極や液晶・プラズマディスプレイパネル。光学用の高選択性干渉フィルターなどが代表的です。
現状は製造工程が複雑であり設備費用も高額になりがちなことから、付加価値の高い製品に採用されることが多いです。
2. フォトリソグラフィーの工程
フォトリソグラフィーは、次のような工程で行われます。
薄膜コーティング
フォトリソグラフィーの工程では、はじめにパターンを生成する薄膜を基板の表面にコーティングします。コーティングを行う際にゴミや汚れが入り込んでしまうとパターンを正常に生成できません。あらかじめ、基板の表面を精密に洗浄してから薄膜コーティングを行う必要があります。
コーティングを行う際には、スパッタリングなどの成膜技術が効果的です。スパッタリングとは、不活性ガス中に設置した基板に対してプラズマによりターゲットにイオンを衝突させることで薄膜を形成するコーティング法です。
レジストの塗布
薄膜のコーティング後に、有機溶剤で溶かした感光剤(フォトレジスト)を塗布します。フォトレジストはネガ型とポジ型に分類でき、紫外線などを照射することで露光した部分がパターンとなるのがネガ型、一方で露光した部分以外がパターンとなるのがポジ型です。
ネガ型とポジ型は、用途によって使い分けられます。例えば、ネガ型は耐久性が必要な場合や比較的大きなパターンの形成に用いられます。ポジ型は、細かいパターン形成に向いており、高精度なデバイスの製造に効果的です。
レジストの塗布後には、プリベークとよばれる処理が行われます。不要な容器溶媒を蒸発させるために、80℃〜100℃の温度で十分に加熱します。
露光
形成したいパターンをフォトマスクとして作成し、フォトレジストに対して紫外線を照射することでフォトマスクのパターンを転写します。フォトマスクはガラスやフィルムなどを材料として制作されます。
紫外線を照射した部分だけフォトレジストの特性(溶解性)が変化しますので、後工程の処理によって基板に狙い通りのパターンを形成することが可能です。
現像
露光後の基板を現像液に浸すことで、現像を行います。照射済みのフォトレジストは現像液によって溶解しやすくなっているため、不要な部分だけを除去することが可能です。現像を行った後は不要な現像液などが残ってしまわないように、しっかりと洗う必要があります。
洗浄液が基板に残らないように、ポストベークを行います。プリベークよりも高温での処理を行うことで、洗浄液を除去することに加えてレジストを基板に焼き付けるのも目的の一つです。エッチング処理時に課題が生じないようにするためにも、ポストベークは必要な工程です。
エッチング
不要なレジストを除去し薄膜と基板だけを残すために、表面を削るエッチング処理を行います。エッチングには化学薬品を用いずにプラズマを利用するドライエッチングと、化学薬品で表面を腐食させるウェットエッチングがあります。
フォトリソグラフィーのように微細なパターンを形成する必要がある場合には、微細なパターン形成に効果的なドライエッチングが選択されることが多いです。
3. フォトリソグラフィーの課題
高精度な加工が可能なフォトリソグラフィーですが、いくつかの課題があります。
例えば、完全に平坦な基板以外にフォトリソグラフィーを適用するのは困難です。平坦でない場合には薄膜形成やレジスト除去などがうまくいかないでしょう。
また、フォトリソグラフィーを行う際のプロセスにもよりますが、関連する装置は高額であり工数もかかるため、気軽に導入することはできません。量産段階で大量に製造する場合、また製品単価が高い場合には活用できますが、上記のような特徴から試作や少量生産には不向きな技術といえます。
フォトリソグラフィーの用途を拡大していく場合には、ここで紹介したような課題を解消しなければなりません。
4. フォトリソグラフィーの代替技術となる3Dプリンタ
上記のように、微細加工に適用できるフォトリソグラフィーにはさまざまな課題があります。フォトリソグラフィーの代替技術として期待を集めているのが、近年高度化された3Dプリンタによる造形です。
3D造形技術が高度化することで、微細な造形が可能になるため、フォトリソグラフィーでしか実現できなかったような高精度な造形を実現できるでしょう。
このような状況の変化によって、近年はフォトリソグラフィーの代替手段として、高精度な3Dプリンターに対する期待が高まっています。
5. BMFの高精度3Dプリンタによるフォトリソグラフィーの代替例
BMFでは、3Dプリンタの実用化が進むなか、PµSL(Projection Micro-Stereolithography)と呼ばれる、独自の光造形技術を開発。PµSL技術は、フォトリソグラフィーの代替技術としても注目されています。
BMFの超高解像度3Dプリンタによる、微細な造形例をご紹介します。
マイクロウェルアレイの造形例
マイクロウェルアレイは、細胞培養やマイクロ流体デバイスなどの研究で広く活用される微細構造を持つ部品です。
BMFの超高精細3Dプリント技術「PµSL」は、紫外線を用いた面露光方式により、2μm/10μmの光学解像度と±10μm/25μmの加工公差を実現。これにより、金型やマスク不要で、複雑な微細形状のマイクロウェルアレイを短期間で製作でき、研究プロセスを大幅に加速することができました。
マイクロウェルアレイの仕様例
· 孔直径6mm・孔間隔1.2mmの8×8配置(64ウェル)
· 孔直径15mm・孔間隔0.44mmの22×22配置(484ウェル)
· 各底面の厚さは 50μm(貫通孔ではない)
さらに、BMFで製作したマスターモールドを活用することで、シリコンへの付着を抑えながら高品質な成形を実現。
注文から試作までわずか2週間、複数のモデルを迅速に作成・評価できる環境を構築しました。
6. フォトリソグラフィーとは?まとめ
今回は、さまざまな製品の加工法として用いられているフォトリソグラフィーについて、特徴や用途、工程に関して紹介しました。フォトリソグラフィーは高精度な加工が可能ですが、製造工程が複雑であり設備の導入費用なども高額になるというデメリットがあります。
特に少量生産や試作品などの製造には適用しにくいため、高性能な3Dプリンターの採用が期待されています。今後、フォトリソグラフィーの代替技術として3Dプリンタの用途が拡大していくでしょう。