3Dプリンタで使われる素材を解説|樹脂の種類と選び方のポイント

3Dプリンタでは、さまざまな樹脂が素材として使われます。これらの素材を選定する際には、造形物の用途や使用環境を明確にすることが重要になります。
この記事では、3Dプリンタで使われる素材の選び方や代表的な樹脂の特徴、高機能材料について紹介します。

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3Dプリンタ用素材の選び方のポイント

3Dプリンタ用素材の選び方のポイント

3Dプリンタ用の素材にはさまざまな種類があり、日々新しい素材が開発され続けています。素材を選ぶ際には、仕様、環境、機能、デザイン性などさまざまなポイントがあります。
3Dプリンタ用の素材を選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。

仕様 寸法精度、形状精度、強度 など
環境 耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性 など
機能 透明性、柔軟性、難燃性、絶縁性 など
デザイン性 着色性 など

どれほどの仕様が必要?

仕様は、主に「精度」と「強度」がポイントとなります。

精度の必要性

造形物の精度には、3Dプリンタ本体の性能や造形方式など、さまざまな要素が影響しますが、素材自体の特性も精度に大きな影響を与えます。
樹脂の種類によっては、加熱時の膨張、冷却時の収縮に加え、加工時に反りや変形が発生する可能性があります。

強度の影響

造形物の強度は、造形方式と素材の強度に依存します。強度を必要とする場合、強度の高い素材を使いますが、造形物の仕上げに切削や研磨が必要な場合、素材の強度が高すぎると仕上げが難しくなってしまいます。
最終的な造形物に必要な強度と加工性のバランスを考慮し、素材を選定する必要があります。

どんな環境で使用する?

素材を選定する上で、造形物の使用環境も重要なポイントとなります。例えば、屋外や直射日光のあたる場所で長期間使用する場合は、耐候性の高い素材が必要です。耐候性が低いと、変色や強度が低下することがあります。
また樹脂の中には高温・低温環境化で物性が大きく変化するものもあります。製品の使用温度帯によっては、必要な強度を保てず破損してしまうこともあります。
他にも、化学物質に触れる可能性がある場合は耐薬品性、湿度の高い環境で使用する場合は吸湿性の低い素材を採用する必要があります。

このように3Dプリンタの素材を選定する際には、使用環境を明確にし、必要な機能を長期間満たせるかどうかを確認することが重要です。

どんな機能が必要?

3Dプリンタの造形物には、透明性、柔軟性、難燃性、絶縁性など、さまざまな機能性が求められるものがあります。
機能性を優先する場合は、造形物に必要な機能を明確にした上で、精度や耐久性をどれだけ許容できるかを検討していくことが重要です。

デザイン性が必要?

3Dプリンタの造形物には、フィギュアのようにデザイン性が重視されるものもあります。デザイン性が重視される場合、精度や機能性よりも着色性が選定のポイントになります。
着色性においては、狙った色で塗装が可能か?塗装状態を長期間維持できるか?などが、選定のポイントになります。

3Dプリンタで使われる素材の種類

3Dプリンタで使われる素材の種類

3Dプリンタで使われる素材にはさまざまな種類があります。
ここでは代表的な樹脂素材を中心に、それぞれの特徴と適応される造形方式、どのような用途の造形物に向いているかを紹介します。

ABS樹脂

ABS樹脂は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)を結合させた代表的な素材で、汎用性が高く、主に熱溶解積層方式(FDM)で用いられます。
耐衝撃性や耐熱性、耐薬品性が高い一方で、耐候性が低く、湿気による反りなどが生じるため、屋外で使用する場合には注意が必要です。

ASA樹脂

ASA樹脂は、ABS樹脂のブタジエン(B)をアクリレート(A)に置き換えた素材です。
ABS樹脂の耐候性の低さが改善されており、屋外でも採用できる点が特徴です。一方で、耐熱性や摩擦力に弱いデメリットもあります。
ABS樹脂と同様に、熱溶解積層方式(FDM)に対応しています。

PLA樹脂

PLA樹脂は、ABS樹脂と並んで3Dプリンタで多く使われる素材です。植物由来で環境に優しく、注目を集めています。
ABS樹脂と同様に熱溶解積層方式(FDM)で用いられ、ひずみや反りが起きにくいことから、造形品質が高い点が特徴です。一方で、機械強度や耐久性が低く、耐熱性も高くないため、主に模型や玩具などの製品に用いられます。

アクリル樹脂

アクリル樹脂は合成樹脂の一種で、透明度が高いことが特徴です。また、耐衝撃性や耐候性に優れているため、屋外で使われる建材や強度が必要とされる車載部品などに採用されています。
一方で、耐熱性が低く吸水による変形も起こりやすいため注意が必要です。紫外線光による硬化速度が早いため、主にインクジェット方式で用いられます。

ナイロン樹脂

ナイロン樹脂は、高い特性を持つエンジニアリングプラスチックです。耐衝撃性や耐熱性に優れ、耐薬品性や柔軟性を合わせもつことから、自動車部品にも採用されています。
主に粉末焼結方式(SLS)で使われますが、粉末の除去に手間がかかることがデメリットです。

PP樹脂

PP(ポリプロピレン)樹脂は、耐熱容器や玩具など日用品に多く採用されている素材です。
耐熱性や耐衝撃性、耐薬品性に優れており、軽量な点も特徴です。一方で、密着性が低いため積層させにくく、造形中に反りが発生しやすい点がデメリットです。
主に粉末焼結方式(SLS)で造形されますが、近年は素材・3Dプリンタの改良により、熱溶解積層方式で用いられることもあります。

ポリカーボネート樹脂

ポリカーボネート樹脂は、ナイロン樹脂と同様にエンジニアリングプラスチックに分類される素材です。
機械的強度や透明性が高いことから、工業製品や試作品の素材として採用されています。一方で、高温多湿の環境下に弱く、耐薬品性が低い点がデメリットです。
熱可塑性樹脂のため、主に熱溶解積層方式で用いられます。

石膏(せっこう)

3Dプリンタでは、模型やフィギュアなどを造形する際に、石膏が用いられることがあります。
石膏は安価で着色性が高い点がメリットですが、脆く造形時の粉末除去に手間がかかる素材です。
主に、粉末を接着剤で固める粉末接着方式で用いられます。

シート積層方式の3Dプリンタでは、紙を材料として造形することも可能です。
安価で着色性も高く、使い捨て用途に最適です。一方で、強度や耐水性などは低いため、用途は限定されます。

産業用途に最適な高機能材料と、BMFのアプリケーション

産業用途に最適な高機能材料と、BMFのアプリケーション

産業用途で使われる業務用3Dプリンタでは、一般的な素材にくらべ、高靭性、高温耐性、生体適合性など、より高い機能性を持った素材が求められます。 BMFで取り扱っている、高機能材料についてご紹介します。

BMFでは各種高機能材料に対応した、超高解像度3Dプリンタをご提供しています。
高靭性、高温耐性、生体適合性を必要とする3D造形は、ぜひ一度BMFまでご相談ください。

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耐熱性樹脂

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熱変形温度114℃/217℃ (@0.45MPa)まで使用することができる、耐熱性の樹脂です。
高い温度環境下で使われるコネクタ部品・耐熱部品や、高音消毒にも耐えられる医療機器部品などに最適です。

高靭性樹脂

高靭性樹脂

高い靭性を持つ高機能樹脂です。試作品だけでなく、組立部品や曲げ強度が要求される部品にも最適です。長期間の使用にも耐えることができます。

生体適合性樹脂

生体適合性樹脂

生体適合性認定 (Level-1)の高機能樹脂です。マイクロ流体や医療機器など、生体適合性が要求される試作部品に最適です。また医療分野以外でも、食品業界や歯科業界での応用も期待されています。

セラミック

セラミック

セラミックは、耐熱性や耐食性、電気絶縁性などの特徴を持った、高機能材料です。自動車や半導体を中心に、産業機械や医療などの分野で必要不可欠な材料となっています。機械部品や医療機器部品など、高温、高強度、高耐摩耗性用途に最適です。

樹脂の種類と選び方のポイントまとめ

産業用途では、一般的な素材・材料に比べて、高靭性や生体適合性など、さまざまな特性が求められます。これらのニーズに対応していくためには、高機能材料に対応した3Dプリンタの採用が重要です。
今後はアプリケーションに応じて、どのような素材が扱えるかも、3Dプリンタ導入の大きな選定基準となっていくでしょう。

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