医療機器や半導体などの精密な構造を持つ製品が適切に性能を発揮するために用いられている技術が「精密機械加工」です。近年では3Dプリンターの技術も大きく進歩し、精密機械加工で作られる製品の試作も3Dプリンターが担うケースもあります。
今回の記事では精密機械加工の種類や技術に加えて、3Dプリンターを精密機器の試作に用いるメリット、3Dプリンターと精密機械加工との比較や使い分けを解説します。
BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
精密部品の製作に高精細・高精度3Dプリンターをご検討の際は、BMF Japan 株式会社にご相談ください。
【目次】
精密機械加工とは?仕組みや用途
ここでは、精密機械加工とは何かに加えて、技術の仕組みや用途について解説します。
精密機械加工とは
精密機械加工とは、数ミクロン〜数十ミクロン程度までの、マイクロメートルレベルでの加工が実現する加工技術のことです。英語では「precision machining」と呼ばれています。
精密機械加工では、一般的な工作機械で行う切断加工や穴あけ加工では実現できない高精度かつ複雑な加工が実現できるのが特徴です。金属素材はもちろん、セラミックスや樹脂など幅広い素材に対して適用できるメリットがあります。
精密機械加工の仕組み
精密機械加工には、3DCADによって設計されたパーツの形状を工作機械に読み込ませた後、機械が自動的に寸法通りの加工を行う「コンピュータ支援製造 (CAM) 」が導入されています。
3DCADによるデザインと工作機械が連動することで、精密かつ複雑な加工が可能です。加工が終わった後は、バリ(世知断面のエッジ部分に付着した薄皮状の素材)を取り除き、研磨などの表面処理や仕上げを行います。その後必要に応じて微調整を行い、設計された試作や製品の寸法へより近づけていきます。
精密機械加工が活用されている用途・分野
精密機械加工は、一般工作機械では不可能な緻密かつ複雑な形状の加工が可能です。さらにさまざまな素材に対応できることから、幅広い用途や分野で活用されています。
おもな精密機械加工が活用されている用途や分野を順に紹介します。
自動車業界
自動車部品の中でも、高精度の加工技術が求められるエンジンやトランスミッションの製造に精密機械加工が用いられています。自動車は製品に不備があると人命に関わることがあり、より精密な寸法も公正に実現できる加工技術が必須です。
使用する素材によって加工難度が上がることや、部品の小型化や軽量化が求められていることも、自動車部品の試作や製造で精密機械加工が重視されている理由のひとつです。製品のサイズが縮小されると、微細な加工が必要となります。同等のコスト維持しつつも品質を保つためには、精密機械加工が欠かせないといえるでしょう。
航空機業界
航空機の中ではエンジン周りの部品に精密機械加工で作られたパーツが採用されていることが多いです。エンジンは航空機の動作に直結する重要な機器であることに加えて、近年はカーボンニュートラルの観点からより技術や品質の高いエンジン製造が求められているため、精密機械加工がより多く用いられています。
航空宇宙産業
航空宇宙産業では、ロケットや人工衛星、宇宙ステーションといった複雑な機構を持つ機器が多いです。わずかな寸法誤差が生じると全体の動作に影響が出てしまうため、厳密な公差を実現するために精密機械加工技術が活用されています。
ロボット技術や医療用機器の分野
ロボット製造や試作の中でも産業用ロボットや手術支援ロボット、医療用機器は精密な動作が必要とされるため、精密機械加工が活用されています。
IT業界
IT業界の技術進歩を支える半導体製造に、精密機械加工が用いられています。半導体は多くの複雑な部品が用いられているため、少しのダメージでも正常に稼働しない恐れがあります。
部品ごとに適した素材を選定し、適切な加工方法で製造する必要があることや、半導体を構成する各部品の形状が特殊なため一般的な工作機械では加工できないこと、部品ごとのサイズが非常に小さいことなどからも、精密機械加工が半導体製造に欠かせない加工技術であることが分かります。
精密機械加工の種類
精密機械加工は、目的や素材に応じてさまざまな加工方法が用いられています。代表的な加工方法を順に解説します。
レーザー加工
レーザー加工とは、レーザー光を当てて金属を切断、加工する方法です。以下のメリットがあります。
・穴を開ける、印付けをする等も可能 |
ホーニング加工
ホーニング加工とは、ワークの内側にホーンの周りに取り付けられた砥石を押し付けることで、内面を精密に削ります。1ミクロン以下での研削が可能なため、同じ内面加工であるリーマ加工やNC研磨盤での加工と比較し、より高い精度で仕上げられるのが魅力となっています。
精密な加工技術が必要なときや、一次加工を終えたワークの精度をより向上させたいときなどに使用されるのが一般的です。
放電加工
放電加工とは、アーク放電の熱を利用しワークを溶解させながら加工する表面処理加工のことです。以下のメリットがあります。
・ワークが加工液に浸かっていて冷却されている状態で加工されるため、熱による変形を起こしにくい ・1ミクロン単位の高精度で加工可能 ・電気エネルギーを使用しているので硬い素材の加工も可能 ・複雑な形状の素材、歪みが発生しやすい薄い素材にも対応できるので切削加工よりも多くの形状を加工可能 |
放電加工には素材に電極と逆の形状の掘り込みをする「型彫り放電加⼯」、輪郭加工を行う「ワイヤ放電加⼯」、溶融し除去をしながら細穴を空ける「細穴放電加工」があり、加工の際にはそれぞれの加工方式に適応した放電加工機が必要です。
プラズマ加工
プラズマ加工とは、物質の第4状態であるプラズマを使ってワークを切断する加工方法です。以下のメリットがあります。
・通電するものであればほとんどの素材が加工できる |
溶射加工
溶射加工とは、溶融・半溶融状態の金属やセラミックを表面に噴射することで塗布・コーティングする表面処理加工です。以下のメリットがあります。
・対象物の温度を300度以下に保てる |
溶射加工された物体は、耐磨耗性や耐腐食性の向上や、絶縁性の特性の付与が可能となります。
切削加工
切削加工とは、材料を工作機械や切削工具で削り、目的に形状に加工する方法です。「フライス加工」「旋盤加工」「穴あけ加工」などの種類があります。除去加工のひとつである研削加工よりも、削る力が強いことが特徴です。
高精度の加工を実現するには、刃物の選定、クーラントの選定、加工量、など条件を、かなり厳しく管理する必要があります。材料を削り取る際に、残留応力が残ったり、温度上昇があったりするため、変形のリスクが発生することがあります。リスク防止のために、条件下での厳しい管理が必要です。
研削加工
研削加工とは、高速回転する砥石で材料の表面を削る加工方法です。加工量が非常に小さく、クーラントを大量に使用するため、温度上昇を抑制できます。残留応力も少なくなり、高精度加工が比較的簡単にできるのも特徴です。ただし加工する形状に限界があります。
精密機器や製品の試作に3Dプリンターを活用するメリット
3Dプリンターの技術が進歩し、精密機械加工が必要な精密機器・製品の試作に高精度3Dプリンターを活用するケースも多くなりました。
精密機械加工ではなく高精度3Dプリンターを精密機器や製品の試作に活用するメリットを解説します。
複雑な形状を低コストで加工できる
精密機械加工は材料を削り出して加工するのに対して、3Dプリンターは樹脂や粉末などの材料を積層して製作するのが特徴です。
精密機械加工ではできない、材料の内部に切削工具を入れないとできない以下のような加工も実現可能です。
・中空形状 |
精密機械加工では不可能、またはコストが高くなる複雑な形状も、低コストで加工できるのが、3Dプリンターの魅力です。
幅広い材料に対応できる
精密機械加工に対応できる材料は、金属、非鉄金属、プラスチック、石膏、ゴムなどです。
3Dプリンターは一般的に機種ごとに使用可能な材料に制約があるため、プリンターの専用材料が対応できる範囲であれば、同じ材料に対応できます。
一方で、3Dプリンターでも材料の制約を受けずに造形可能な方法も開発されています。
BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」なら、従来の加工方法では不可能だった複雑な微細構造を持つ精密部品を直接製作するだけでなく、新素材である「犠牲樹脂」を使用して金型を作成することも可能です。この金型を利用して、PDMS、PP、POM、LCPなどの特定材料を要する精密部品をキャスティングまたは射出成形で製造することができます。
【参考動画】
引用:犠牲樹脂と射出成形のプロセス|BMF Japan 株式会社
可溶性犠牲樹脂については以下の記事で詳しく解説しています。
納期が短縮できる
精密機械加工の場合、制作時間のほか外注する場合には社内での手続きや外注を依頼する業者の選定、見積もり依頼などさまざまな時間が発生します。一般的に精密機械加工で製品製造や試作の製作を行う場合、1週間ほどの納期が必要です。
3Dプリンターの場合、設計や材料などの条件がそろっていれば、数時間~数日以内で製作可能です。
たとえばBMF Japan株式会社の高精度3Dプリンター「microArch®シリーズ」は、2μm/10μmの優れた光学解像度でありながら、90%以上のケースが3~48時間以内に造形完了しています。
【参考動画】
引用:3Dプリンターによるマイクロニードルアレイ|BMF Japan 株式会社
コストだけでなく試作製作にかかる時間の削減にもつながるでしょう。
試作回数を負担なく増やせる
3Dプリンターなら精密機械加工で発生する外注時の検討や外注先での加工時間やコスト面での制約が少なくなるため、手間なく試作回数を増やすことができます。複雑な形状の試作品を何度も作って、検証を繰り返したいときにも3Dプリンターが向いているでしょう。
さらに、3D造形サービス(試作サービス)を活用すれば、Dプリンターを購入せずに造形を依頼することも可能です。高精度の3Dプリンターは購入費用が高価になりますが、3D造形サービスを利用することで費用を抑えることができます。
3D造形サービス(3Dプリントサービス)については以下の記事も参考にして下さい。
より高い製作精度が実現する
精密機械加工の場合数ミクロン〜数十ミクロンでの精度での加工や製作が実現します。3Dプリンターは造形方法や機種にもよりますが、それを上回る数十ミクロン〜数百ミクロンでの寸法精度が実現可能です。
複雑な形状も簡単に製作できるため、試作で操作性やデザイン、組付け性などを検証したいときにも向いているといえます。
BMF Japan 株式会社の超精密3DプリンターmicroArch®シリーズは、独自の光造形技術で数マイクロメートルから数百ナノメートルの解像度を実現しています。もちろん、大きな設計変更にも迅速に対応可能です。
microArch®シリーズの仕様は以下の通りです。
引用:https://www.bmf3d.co.jp/category/cat3d-printers
以下の記事では、3Dプリンタ―で試作を作成する場合の切削加工との比較や、メリット・デメリットを解説しています。
また、以下の記事では、高精度3DプリンターとCNC加工を比較しています。
精密機械加工と3Dプリンターの使い分け
3Dプリンターと精密機械加工はそれぞれに得意・不得意があるため、上手に使い分けるのがおすすめです。
精密機械加工と3Dプリンターを使い分けるポイントを解説します。
性質の検証は精密機械加工で行う
3Dプリンターは気軽に精密機器や製品の試作ができる一方、積層による造形であるため精密機械加工よりも完成物の強度が落ちるデメリットがあります。さらに、たとえば熱的性質など、造形で使用する材料によって性質が左右される場合もあります。
精密機械加工は完成品と同じ材料を加工するため、性質的な変化もなく強度も保てるのがメリットです。早い段階の試作や、何度も繰り返す試作のときには3Dプリンターを活用し、特性の検証など機器や製品の最終形の試作では精密機械加工を使うなど使い分けることで両方のメリットが活かせるでしょう。
大きなサイズは精密機械加工またはミニチュアで対応
3Dプリンターは機種により対応可能なサイズに限界があります。
精密機器や製品が大きなサイズの場合は、精密機械加工を採用するか、ミニチュアサイズを3Dプリンターで製作し、操作性やデザイン性など限定的な検証にとどめる、といった方法がおすすめです。
まとめ
精密機械加工の概要や種類、精密機械加工を3Dプリンターで行うメリットや、精密機械加工と3Dプリンターの使い分け方法を解説しました。3Dプリンターは技術も飛躍しており、精密機械加工に取って代わる試作品製作や製品製造も可能となっています。ただし、より正確な寸法や材料強度を発揮できる試作や製品製造を3Dプリンターで実現する場合、適切な3Dプリンター選びも重要です。
BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
精密部品の製作に高精細・高精度3Dプリンターをご検討の際は、BMF Japan 株式会社にご相談ください。