精密3Dプリンティング技術により、粒径が均一で制御可能な薬物運搬マイクロスフェアを製造―BMFの新たな量産計画

3Dプリンティングが腫瘍治療と関係しているって本当?


近年、精密医療分野における高精度3Dプリンティング技術の継続的な発展に伴い、3Dプリンティング技術は、腫瘍治療を含む重要かつ困難な分野で広く活用されるようになっています。BMFは、高精度3Dプリンティング技術の先駆者として、研究機関や医療機関との協力を通じて、最先端の研究成果を実用化し、産業化への道を切り開いています。最近では、BMFは北京大学をはじめとする機関と連携し、薬物運搬マイクロスフェア製造技術において革新的なソリューションを提案しました。

                 図:BMF技術を用いて製造されたマイクロスフェア(直径約80μm)

薬物運搬分野において、微球(マイクロスフェア)は通常、高分子材料で形成された微小な球体または球状構造を指し、その粒径は一般的に1~250μmの範囲内にあり、その中に薬剤が溶解または分散されています。マイクロスフェアの薬物運搬原理は、物理的手段によってポリマー表面または内部に薬物をカプセル化または吸着させることにあります。このようなマイクロスフェア製剤は、標的性、徐放性、長効性、塞栓性といった特性を持ち、薬物の有効濃度を高めるとともに、全身毒性や副作用を軽減することが可能です。

マイクロスフェア製剤は、がん治療、薬物リハビリテーション、アルコール依存の解消、疼痛緩和など、さまざまな臨床分野で幅広い需要があります。 特に薬物運搬システムの市場規模は、2020年の330億ドルから2025年には560億ドルに拡大すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は11.2%に達すると見込まれています。

しかし、現時点では、関連技術を保有している製薬大手は世界的にもごく少数に限られています。また、薬物運搬マイクロスフェアを調製する従来技術には依然として多くの課題が存在します。これに対し、BMFは、独自のマイクロ3次元リソグラフィ技術を用いて、ハイスループットマイクロ流体デバイスを開発しました。このデバイスを活用することで、粒径が均一で制御可能な薬物運搬マイクロスフェアを製造でき、生産効率の向上、コストの削減、製造プロセスの簡略化を可能にしました。

精密3Dプリンティング技術は、薬物運搬マイクロスフェアの製造に革新的な生産方法をもたらす


薬物の投与量および放出速度は微球の粒径と密接な関係があるため、薬物運搬マイクロスフェアの粒径を均一かつ制御可能にすることが非常に重要です。従来のマイクロスフェアの製造には主に以下の2つの技術が利用されています。

1つ目は「乳化蒸発法」です。この方法では製造されたマイクロスフェアの粒径にばらつきが生じやすく、均一性が低いため、安定した薬効を保証することが困難です。また、製造後に粒径が不均一なマイクロスフェアを選別する必要があり、この選別工程により薬剤の半分以上が廃棄される場合も多く、生産効率と製造コストの面で大きな課題を抱えています。

2つ目は「リソグラフィ法」を用いたマイクロ流体デバイスの製造です。この方法では、粒径が均一で制御可能な微粒子の製造が可能ですが、工程が非常に複雑でコストが高く、製造効率が低いことから、主に研究段階にとどまり、実用的な産業化には至っていません。

   図:市販のナルトレキソン製品は粒径の均一性に欠けている。

BMFの高精度3Dプリンティング技術により、全く新しいマイクロ流体チップの製造方法が実現されました。複雑で精密な内部流路を備えたマイクロ流体チップを一体成形で直接製造することで、粒径が均一で制御可能なマイクロスフェアの生産が可能となり、大幅なコスト削減と生産効率の向上を達成しました。また、3Dプリンティング技術の柔軟性を活かし、異なる薬剤や異なる媒質(例えば、異なる材料や同一材料でも異なる分子量)への迅速な切り替えが可能となり、カスタマイズ生産に幅広く対応します。

           図:BMF技術を利用して製造されたマイクロスフェアは、粒径の均一性と制御性を実現した

研究成果を量産製品へ:BMFは顧客の産業化事業に積極的に参加


薬物運搬マイクロスフェアは、極めて専門的かつ細分化された二ッチ市場です。BMFはどのようにしてこの分野を発見し、参入したのでしょうか?

2024年10月現在、BMFは東京大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする世界的に有名な大学や研究機関600以上と提携しています。これらのトップクラスの研究機関は、BMFの技術を利用し、再生可能エネルギー、精密医療、ライフサイエンス、新素材、人工知能など多岐にわたる分野の研究を進めています。関連する研究成果は、Science、Nature、Advanced Materials といった一流学術誌に頻繁に掲載されています。

これらの顧客は、理論的知識が豊富で発想力に富んでおり、交流を通じて数多くの着想が生まれ、それがいくつかの産業化プロジェクトの誕生につながっています。

また、BMF自身もラボラトリー技術から成長した企業として、発展の過程で資金調達、運営、製品反復、グローバルマーケティングなど豊富な経験を積み重ねてきました。世界各国・地域において強固な事業ネットワークを築いているため、製品開発における新規プロジェクトや新規パートナーを支援するだけでなく、資金調達、運営、マーケティングにおいても強力なサポートを提供しています。

近年、BMFは戦略方針を転換し、装置販売や3D造形サービスに加え、企業や研究機関と積極的に連携し、製造技術による産業革新を促進するプラットフォームを構築しています。一方では、従来型製造業の研究開発や生産プロセスを改善することで、効率アップとコストダウンを実現しています。他方では、独自技術の優位性を活かし、従来の技術では実現不可能だった製品を市場に送り出し、革新的な進化をもたらしています。

2021年以降、BMFと複数のパートナーとの共同努力により、わずか3年足らずで画期的な超薄型べニア製品をラボから世界市場へ送り出しました。これは、BMFのオープンイノベーション戦略の重要な成果の一つです。この製品は「La Briller」というブランド名(公式サイト:https://nanoism.co.jp/)で2024年10月に日本国内で正式発売されました。

さらに、BMFの進行中の研究プロジェクトには、有名化粧品ブランドと共同で3Dプリンティング技術を用いた磁気装着型を開発し、生産ラインの自動化を改善することや、世界的に有名な製薬会社と共同で毛細血管構造を模擬した新型オルガノイド培養チップを開発し、新薬研究に新たな推進力を与えることなどが含まれています。 現在、ますます多くの研究機関や企業のR&D責任が、BMFとの協力を求め、生産技術の新たな方向性を共に追求しています。

 

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