身の回りには既にさまざまなロボットが存在していますが、これから発展が期待されるロボットのひとつにマイクロロボットがあります。本記事では、マイクロロボットの活躍が期待されている分野や事例、メリット・デメリット等を解説します。また、マイクロロボットの部品製作方法としてメリットが大きいマイクロ3Dプリンティングについても紹介しています。
BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
マイクロロボットの部品製作に高精細・高精度3Dプリンターをご検討の際は、BMF Japan 株式会社にご相談ください。
マイクロロボットとは?
ロボットは一昔前まではアニメやマンガの中の存在でしたが、近年の技術革新によって身近なものとなってきています。家庭用のペットロボットやお掃除ロボット、工場で組み立てやピッキング、検査・選別などに使用されているロボットなど様々なものがあります。
マイクロロボットとは非常に小型のロボットの総称で、人間や他のロボットでは入ることのできない場所での作業を目的に使うことを想定されています。その世界市場は2022年の時点で3億1740万ドルとも言われ、2031年までの年平均成長率は17.5%、2031年には8億5321.38万ドルまで成長するとされています。
(引用:https://www.intellectualmarketinsights.com/report/micro-robot-market-size-and-share-analysis/imi-007225)
マイクロロボットは非常に小型のため、稼働時の消費エネルギーや輸送時のエネルギーが抑えられるなどのメリットもありますが、稼働エネルギーの確保や制御が難しいなどの課題もあります。それらの課題が解決され、マイクロロボットが活用されることでさらなる技術革新が期待されます。
マイクロロボットの活躍できる場所
マイクロロボットはまだまだ発展途上の技術の1つです。将来的には現在では考えられてないような用途に使われることもあるかもしれませんが、すでに活用されている場面もあります。
本章ではマイクロロボットが活用されている場所や今後活躍が期待されている場所について解説していきます。
医療分野
医療分野では、口から飲み込んで胃や腸などの消化器官の映像を撮影できるカプセル型の内視鏡がすでに実現されています。ただし、このカプセル型の内視鏡は飲み込んだ後は自然に排出されるのを待つだけで、体外から遠隔操作したり、能動的に動作することはできないので厳密にはマイクロロボットとは言えません。
マイクロロボットの研究開発が進むことで、薬剤を特定の臓器やがん細胞のみに届けることができるようになればより効率的に薬効を発揮できると期待されています。また、マイクロロボットでポリープや腫瘍を切除できるようになれば、現在行われている内視鏡手術よりもさらに低侵襲な手術ができるようになるかもしれません。
引用:飲む胃カメラ? 錠剤型マイクロロボット「PillBot」
製造業
現在でも大きなサイズのロボットが利用されている製造業ですが、マイクロロボットも製造業での活用が期待されています。
製造業においてマイクロロボットは、さらに小さなマイクロロボットの作成や、通常のロボットでは入り込むことのできない装置内まで入り込み検査を行うなどの用途が考えられます。
バイオ分野
バイオ分野では、観察対象の細胞や微生物のみを取り出して処理したり観察する場合には、非常に繊細な処理が必要となります。マイクロロボットにマニピュレーターを取り付けることで、そのような繊細な処理に利用できるようになることが期待されています。
環境モニタリング
マイクロロボットは河川や大気中、土壌中の汚染物質や化学物質などのモニタリングにも活用できる可能性もあります。また、狭くて複雑な形状の配管点検などのインフラ整備にも利用が期待されています。
農業分野
現在日本では、農業従事者の減少や高齢化により農作業の人手不足が問題になっていて、人手不足を解消するために農業ロボットやドローンを導入しているケースも多く見られます。
近年ではデータを活用して肥料や水、燃料などのコストを最小に抑え、収穫量や品質の向上など、トレーサビリティを確立し重労働を軽減する精密農業という考え方があります。そのためのデータ収集や害虫対策にマイクロロボットが活用されるかもしれません。
災害時の救助活動
マイクロロボットは、災害時に倒壊した建物のすき間から、建物内に取り残された要救助者の捜索ができるようになると考えられています。マイクロロボットがより狭い場所に入り込むことで要救助者の発見だけでなく、救助員が2次災害に巻き込まれるリスクも減らすことができます。
マイクロロボットが要救助者の状態を確認したり、マイクロロボットにスピーカーやマイクを取り付けることで、要救助者との声のやり取りが可能になるかもしれません。
過酷な環境での調査
宇宙空間や深海、有害物質に暴露する可能性がある環境課などでは、ロボットを活用することで調査や作業を安全に行うことが可能になります。
特に惑星探査で使用されるロボットは、持ち込むことのできる重量に厳しい制限があることから非常に小型なマイクロロボットの活躍が期待されます。そのためには微小な重力下でも狙った目標に移動することのできるマイクロロボットが求められています。
マイクロロボットの事例
ここでは、マイクロロボットの事例を紹介します。
さかさまになっても落下しないマイクロロボット
引用:https://wyss.harvard.edu/news/robots-with-sticky-feet-can-climb-up-down-and-all-around/
ハーバード大学ワイス生物模倣工学研究所とジョン・A・ポールソン工学応用科学大学院(SEAS)では、電気接着式足パッド、折り紙のような足首関節、特別に設計された歩行機構を備え、商用ジェットエンジンの内壁のような垂直および逆さまの導電性表面を登ることができるマイクロロボットを開発しました。
この研究を進めることで、将来的には、大型機械の手の届きにくい場所を非侵襲的に検査できるようになることが期待されます。
生物の脳の神経細胞のつながりを模した電子回路を搭載した昆虫型マイクロロボット
引用:https://www.sankei.com/article/20190224-QQIQPPONT5IMHJ4AKPY4PCALGE/
日本大学では、半導体技術を応用し、従来の機械加工技術では難しい極小の昆虫型ロボットを作成しました。複雑な制御なしに、自然界のように予測不能な状況に対応できるようにするため、生物の脳の神経細胞のつながりを模した電子回路を搭載しています。
ロボットを群れで放して自然環境の調査をしたり、さらに小型化して人間の脳を手術できるようにしたりといった活用を目指しています。
体内を泳いでがん細胞に薬を届けるマイクロロボット
引用:https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/100206
中国では、磁気でがん細胞まで誘導されpHの変化で形状変化して掴んでいた薬剤を放出するマイクロロボットの概念実証が行われました。
抗がん剤を使った治療は多く行われている一方、がん細胞以外の正常な細胞まで攻撃してしまうため、大きな副作用が伴います。この研究が実用化されれば、がん治療が大きく前進することが期待できるでしょう。
マイクロロボットのメリット
マイクロロボットはその小ささから、ヒトには入り込めないところでの作業ができることや、稼働エネルギーを抑えられるなどのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
人間では入り込めない場所で作業が可能
マイクロロボットの最大の特徴はその小ささであると言っていいでしょう。非常に小型なので、従来はチューブ型の小型カメラなどを利用して確認していたような狭い配管内でもマイクロロボットが入り込み、より詳細な情報を得ることも可能です。
また、水中の細菌などを検出したり人間の血管内に注入できるサイズまで小型化することで薬剤を目的部位に効率的に届けたり、疾患の早期発見につなげることも可能です。
稼働時のエネルギーを小さく抑えやすい
マイクロロボットは、小型で軽量なため稼働時に必要となるエネルギーは小さく抑えることができます。また、マイクロロボットを持ち運ぶための輸送エネルギーや作成のための材料の使用量なども少なく抑えることが可能なので、ランニングコストを抑えることにもつながります。
マイクロロボットの課題
マイクロロボットにはメリットだけでなく、稼働エネルギーの確保やマイクロロボットに不具合が起きたときの対処など解決すべき課題もあります。1つずつ見ていきましょう。
稼働エネルギーの確保が難しい
マイクロロボットは小型化を追及するために、稼働のための燃料やバッテリーを大量に搭載することができない上に、体内での燃料切れやバッテリー切れは許されません。また、体内で使用することを想定したマイクロロボットの場合は、万が一燃料やバッテリー内の成分が外に漏れ出しても生体に影響が出ないようにしなければなりません。そのため、体内で使用されるマイクロロボットは外部から非接触で稼働エネルギーを供給する場合もあります。
一方、マイクロロボットの稼働エネルギーとして利用するための生体適合性のマイクロ電池の研究開発も進んでいます。東北大学では、胃液を電池内部に取り込み電解液として作用させる胃酸蓄液電池を開発しました。
引用:https://shingi.jst.go.jp/pdf/2020/2020_tohoku_6.pdf
実用化に向け、精密加工が可能な3Dプリンターの活用も検討されています。
不具合が起きた場合にマイクロロボットを回収できない
マイクロロボットは、人間では入ることのできないような場所に入り込むことが可能ですが、ワイヤレスで稼働しているので何かしらの不具合が起きて制御不能になってしまうとマイクロロボットを回収できません。制御不能となったマイクロロボットを放置してしまうとマイクロロボットを失ってしまうだけでなく、狭いすき間を詰まらせてしまう可能性もあります。
マイクロロボットは稼働のためのエネルギーを多く搭載できないので、燃料切れになってしまったり、小型のため人間からすると小さな振動でもマイクロロボットにとっては故障の原因となってしまうような振動になってしまう場合もあります。
故障しない丈夫なマイクロロボットを作成するだけでなく、万が一故障してしまった場合の対応も検討する必要があります。
マイクロロボットの部品開発と3Dプリンター
マイクロロボットは非常に小型のため、従来のロボットの製造工程では部品の製作が困難な場合もあります。また、コストや製作時間の問題もあります。
本章ではマイクロロボットの部品開発手法として注目されている高精細・高精度3Dプリンターの活用について紹介します。
マイクロロボットの部品開発に活用可能な3Dプリンターとは
マイクロロボットの部品開発に活用する3Dプリンターは、マイクロ3Dプリンティングに対応可能な機種でなければなりません。
マイクロ3Dプリンティングとは、3Dプリンターを用いてマイクロメートル単位の微細で複雑な形状の部品を作成することを指します。マイクロ3Dプリンティングでは従来の部品の作成方法で必要な切削やプレス、溶接などの機械加工を用いずに高精度な部品の作成が可能です。
BMF Japan 株式会社の超精密3DプリンターmicroArch®シリーズは、マイクロ射出成形の解像度と公差に匹敵する機能でマイクロロボットの部品開発に貢献します。もちろん、大きな設計変更にも迅速に対応可能です。
microArch®シリーズの仕様は以下の通りです。
引用:https://www.bmf3d.co.jp/category/cat3d-printers
マイクロロボットの部品開発に3Dプリンターを活用するメリット
マイクロロボットの部品開発に3Dプリンターを活用すると、従来の機械加工を用いた作成方法に比べて多くのメリットがあります。以下で解説します。
自由に設計が行える
3Dプリンターを活用すれば、切削やプレスなど従来の加工方法では難しいような複雑な形状の設計も可能です。設計の自由度が高くなることで今までは作ることができなかった精密な部品の作成も可能になります。
3Dプリンターなら、従来の加工方法では別々に作成した後で組み立てる必要があった部品を、はじめから1つの部品として作成できる場合もあります。別々に作成した部品を組み立てるよりも1つの部品として作成したほうが工数の削減にもなり、さらに最終的に出来上がるマイクロロボットの信頼性も高くなるでしょう。
また、強固に組み立てることが困難と言われているマイクロモジュールの部品を、特殊なバブル(気泡)を利用するという方法で組み立てた事例もあります。
引用:https://www.bmf3d.co.jp/news/case-study/10682.html
上図のStep2やStep3のように、マイクロモジュールの部品を動かす際にバブルを活用することで、マイクロロボットを強固に組み立てることに成功しています。
実際の動きは以下の動画をご覧ください。
小ロットの生産に向いている
マイクロ3Dプリンティングは小ロットの生産でも、費用対効果を高くすることができます。従来の機械加工ではプレス型を作成して部品を作成するなど、開発初期に費用が多くかかるため、小ロットの製造には向いていません。
また、メーカーによっては、3D造形サービスを活用することで3Dプリンターを購入せずに造形を依頼することも可能です。高精度の3Dプリンターは高価になりますが、3D造形サービスを利用することで費用を抑えることができます。
3D造形サービス(3Dプリントサービス)については以下の記事も参考にして下さい。
材料の使用量を最小限にできる
従来の加工方法では、素材から部品を削り出したり打ち抜いたりするため、材料の無駄が出てしまいます。
マイクロ3Dプリンティングでは、設計図に沿って必要な部分のみを積み上げていくのでムダになる材料の量を最小限に抑えることができます。
リードタイムを短縮できる
3Dプリンターなら、従来の金型による製造方法と比較しても、金型が不要である分スピーディーです。
たとえばBMF Japan 株式会社のmicroArch®シリーズは、90%以上のケースで3~48時間以内に製作完了しています。
また、組み立て部品の一体化による工数の削減や、部品の微調整などを従来の加工方法に比べて速やかに行うことができることも、リードタイムの短縮に貢献しています。
金型と3Dプリンターとの比較については、以下の記事を参考にしてください。
生産個数を自由に決めることができる
3Dプリンターなら部品1個から作成できるため、試作段階から活用できます。もちろん大ロットの生産に対応することも可能です。
マイクロロボットの部品開発に3Dプリンターを活用する際の注意点
マイクロロボットの部品開発に3Dプリンターを活用する際の注意点は以下の通りです。
高精細・高精度の造形が得意なメーカーを選ぶ
3Dプリンターにはさまざまな造形方式があります。中でも光造形方式の3Dプリンターは精密な加工が得意と言われていますが、同じ光造形方式でもメーカーによって差があります。
求める精度を満たすメーカー、機種であるかどうか、よく確認する必要があります。
3Dプリンターの種類については、以下の記事も参考にしてください。
3Dプリンターの精度については、以下の記事を参考にしてください。
また、光造形方式の3Dプリンターについては、以下の記事を参考にしてください。
使用できる材料に限りがある
3Dプリンターによって、使用することのできる材料は限定されます。希望する材料を使用可能かどうか、あらかじめ確認しましょう。
3Dプリンターで使用する素材については、以下の記事を参考にしてください。
また、BMF Japan 株式会社では、最終的に熱アルカリで溶かすことができる「可溶性犠牲樹脂」を開発しました。これにより、3Dプリンターで微細かつ精密な金型を作成し、従来の射出成形や直接3Dプリントでは製造できない材料を使った部品も手に入れられるようになりました。
可溶性犠牲樹脂を利用した部品の製造方法は以下の動画を参考にしてください。
まとめ
今後さまざまな分野での活躍が期待されているマイクロロボットについて、活躍が期待されているシーンやメリット・デメリット、3Dプリンターをマイクロロボットの部品製作に活用するポイント等を解説しました。
BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
マイクロロボットの部品製作に高精細・高精度3Dプリンターをご検討の際は、BMF Japan 株式会社にご相談ください。