実験用機器の作成を3Dプリンターで!自作・複製・カスタマイズや事例

化学実験や研究に使用する実験用・研究用機器は、市販品では間に合わなかったりカスタマイズが必要になったりすることがあり、手間やコストなどの課題を抱えている研究室も少なくありません。
これらの課題を解決できるのが、3Dプリンターの活用です。今回の記事では、実験機器の手配において3Dプリンターでできることや3Dプリンターを活用するメリット、実験機器の手配を目的とした3Dプリンターを選ぶポイントを解説します。

BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
実験用や研究用機器や器具の用途で3Dプリンター導入をご検討の際は、化学や研究領域での活用事例も豊富なBMF Japan 株式会社にご相談ください。

【目次】

  1. 実験用・研究用機器に3Dプリンターを活用するとできること
  2. 実験用・研究用機器の自作やカスタマイズに3Dプリンターを導入するメリット
  3. 実験用・研究用機器や器具のための3Dプリンタ―を選ぶポイント
  4. 3Dプリンターによる実験用機器・器具の自作やカスタマイズ事例
  5. まとめ

実験用・研究用機器に3Dプリンターを活用するとできること

          

        3Dプリンターで作製したマイクロニードル               3Dプリンターで製作した細胞培養ディッシュ

            ※使用した3DプリンターはBMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ

実験用・研究用機器や器具をより手軽に手配する手段として、3Dプリンターが活用されています。3Dプリンターの活用により実現できることを解説します。

機器・器具の製造

実験用・研究用機器は市販品を購入することもできますが、大量消費のためのコスト削減少数のみの使用すぐに使いたいときなどのニーズに対応するために、3Dプリンターで機器や器具を製造することも可能です。

3Dプリンターによる実験機器や器具の自作の動きは、世界的に拡大しています。

ネット上では3Dプリンターで作成できる実験用機器の設計図を無料で入手できるサイト「オープンハードウエア」も公開されています。2016年3月の欧州原子核共同研究機構(CERN)の会議では、「実験機器の設計図を他の人々と共有することで、科学の進歩を大幅に加速させることができる」として、オープンハードウェアの推進についての話し合いが進められました。実験機器や器具は意匠や原理について特許を取得しているものはごくわずかのため、知的財産権上の問題が発生しにくいことも、オープンハードウェア推進の追い風となっています。

 引用:https://www.oshwa.org/definition/japanese/
    https://opensource.com/resources/what-open-hardware

    実験機器は「オープンハードウエア」で安価に

機器・器具の複製

3Dプリンターを使えば、実験用・研究用の自作ができるのはもちろん、複製も可能です。3Dデータさえあれば、同じ実験用・研究用機器を何度でも何個でも複製できます。反復実験や類似研究などで同じ機器や器具が複数必要なときなどでも3Dプリンターが活用できるでしょう。

機器・器具のカスタマイズ

実験や研究の内容によっては、市販の機器や器具では対応できないことがあります。今まで手作業で行っていた機器や器具のカスタマイズも、3Dプリンターなら設計図となるデータを修正するだけで、かんたんにカスタマイズ可能です。

実験用・研究用機器の自作やカスタマイズに3Dプリンターを導入するメリット

実験用・研究用機器の自作やカスタマイズに3Dプリンターを活用することで得られる、さまざまなメリットを解説します。

機器や器具の調達コストの削減

実験や研究の内容によっては、使用する機器や器具の調達コストが高額となります。研究室や施設の資金力によっては、高額な機器や器具の購入が難しいといったこともあるかもしれません。3Dプリンターを活用し機器や器具を自作することで、調達コストの削減にもつながります。
インドネシアにあるガジャ・マダ大学の微生物学者がウェブ上の3Dプリンター設計図を入手し、3Dプリンターによって研究室の組織培養用フードと顕微鏡を自作したところ、市価の10%未満の費用(※)で用意することができた事例もあります。

※引用:実験機器は「オープンハードウエア」で安価に

機器や器具のカスタマイズ負担の軽減

実験や研究の内容、使い勝手に合わせて機器や器具を科学者や研究者本人が手でカスタマイズすることも多いです。ところがカスタマイズに貴重な時間を取られてしまい、実験や研究が進まない、作業の効率性が悪くなる、といった課題が発生していました。
3Dプリンターを導入すれば、機器や器具のカスタマイズもデータを修正または調整するだけでかんたんにカスタマイズできます。従来カスタマイズに割いていた時間を実験や研究へ充てることも可能です。

ニーズに合わせた調達の実現

実験や研究に必要な機器や器具を手配後、メーカー欠品や在庫切れ、製造中などですぐに手に入らないことがあります。必要な機器や器具が調達できないことで、実験や研究が途中工程でストップしてしまったり、計画に遅延が出てしまったりといった問題が発生するでしょう。
3Dプリンターを実験室や研究室に導入することで、材料さえあればすぐに必要な機器や器具を作成できます。「1つだけ欲しい」というときにも、わざわざ発注をしなくて済むでしょう。

実験用・研究用機器や器具のための3Dプリンターを選ぶポイント

近年では3Dプリンターの製造技術も飛躍し、さまざまなスペックを持つ3Dプリンターも誕生しています。実験用・研究用機器や器具の自作や複製、カスタマイズを目的とした3Dプリンターを導入する際の、選び方のポイントを解説します。

コスト面

本体価格だけでなく、ランニングコストも踏まえて製品を選定しましょう。
3Dプリンターの本体価格はスペックと比例します。手ごろな価格で購入できるものもありますが、自作やカスタマイズしたい機器や器具の造形に対応していなかったり積層の精度が低い場合などは、せっかく購入しても実用に耐えられないこともあります。
価格の安さだけでなく、活用できるスペックと価格のバランスを考えて3Dプリンターを選ぶことが重要です。

操作面

3Dプリンターの使いやすさについても確認しておきましょう。特に実験や研究の担当者は、3Dプリンターに対する知識やノウハウを持っていない場合も少なくありません。3Dプリンター初心者でもかんたんに操作できるものや、アフターフォローが手厚いメーカーを選ぶと良いでしょう。

精度・印刷可能サイズ

3Dプリンターによって精度のバラツキが大きく、また造形できるサイズもさまざまです。自作やカスタマイズしたい機器や器具に求める精度・サイズを印刷できる3Dプリンターを選びましょう。

BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。また、90%以上のケースが3〜48時間以内に造形を完了しています。

BMFの超高解像度3Dプリンターなら、微細な形状・求めるサイズの実験機器・器具を短時間、高品質に製造可能です。

引用:BMF Japan株式会社「microArch®シリーズ」

使用できる材料

自作またはカスタマイズしたい機器や器具の特性に対応した材料が使用できる3Dプリンターを選びましょう。
使用できる材料は、3Dプリンターや造形方式によって異なります。実験や研究の内容によっては耐熱性や耐薬品性の強いPP樹脂、耐熱性と透明性に優れるPET樹脂などをはじめ、エンジニアリングプラスチックのPC樹脂やナイロン樹脂といった材料からできている機器や器具を使用する必要もあります。

3Dプリンタ―の材料については以下の記事で詳しく解説しています。

動作の安定性や組み立て不要

3Dプリンターのトラブルが発生すると、対応に追われて実験や研究の支障となります。また、組み立てが必要な3Dプリンターの場合、組み立てる時間を取られてしまったり、組み立てミスによるトラブルのリスクもあります。
3Dプリンターに寄与する問題発生を防ぐために、動作の安定性や組み立ての有無についても確認しておくことが重要です。

3Dプリンターによる実験用機器・器具の自作やカスタマイズ事例

ここでは3Dプリンターの実験用・研究用機器や器具への活用事例を紹介します。

高出力レーザー実験用高精度マイクロ流体デバイスの造形事例

イギリスの科学技術施設委員会(STFC-UKRI)の中央レーザー施設「CLF : Central Laser Facility」にて行われている高出力レーザー実験用の微小ターゲットの開発に、高精度3Dプリンターで造形したマイクロ流体デバイスを活用した事例です。
3DプリンターはBMF Japan 株式会社の「microArch® S240」が使用されています。

深さ30μmのチャネルと100μmの出口を備えた20mm×15mm×5mmの構造を印刷し、チャネルに必要な精度と正確さを維持しつつ、より大きな部品の印刷を実現させました。

         オリジナルタングステン部品                    高精度3Dプリンターで印刷した部品

詳細は以下の記事をご覧ください。

膜タンパク質を計測する実現可能性研究へのマイクロデバイス

東大竹内教授と共同研究チームが実施する「膜タンパク質を計測する実現可能性の研究」に3Dプリンターで作成した「ダブルウェル」(DW)構造を持つマイクロデバイスが活用された事例です。
3DプリンターはBMF Japan 株式会社の「microArch® シリーズ」が使用されています。

膜タンパク質が担体として必要とする、脂質二重膜を形成できる高精度のマイクロデバイスを作成しました。同研究の成果は「Lab on a Chip」の表紙に掲載されています。

詳細は以下の記事をご覧ください。

直接駆動型水蒸気発生装置(SVG)の作成

全世界規模の課題として挙がっている水不足の解消のために、注目されている技術が太陽電池による直接駆動型水蒸気発生装置(Direct solar-driven vapor generation device, SVG)です。SVGを携帯浄水器として使用することで、飲料水資源への負担軽減が期待されています。

アラブ首長国連邦とパキスタンの研究チームは、特別に調合したハイドロゲルと酸化鉄ナノ粒子を印刷材料として使い、3Dプリンタ―で新しいタイプのSVGを作成しました。
太陽光吸収効率を高め、水の蒸発に必要なエネルギーの閾値を効果的に下げるだけでなく、3Dプリントで作られた特殊な内部流路により、SVG表面に素早く水を補充できます。この方法で製造されたSVGは単位日射量/一時間/1平方メートルあたり5.12kgの蒸発量を達成しました。

                                           ハイドロゲルSVG及び3Dプリンターによるマイクロ流路

3DプリンターはBMF Japan 株式会社の「microArch® シリーズ」が使用されています。

詳細は以下の記事をご覧ください。

小型ロボットの研究

超精密3Dプリンタ―で50μm以下の細かい部品を作り、特殊な方法でユニークなロボットに組み上げた研究が「ACS Applied Materials & Interfaces誌」に掲載されました。マイクロロボット製造や組み立て領域での3Dプリンター活用拡大も期待されています。

3DプリンターはBMF Japan 株式会社の「microArch® シリーズ」が使用されています。

引用:「事例紹介」小型ロボットの製造、組立、移動

詳細は以下の記事をご覧ください。

まとめ

実験用・研究用機器や器具へ3Dプリンターを活用すると実現することや導入するメリット、3Dプリンター選定のポイントを解説しました。3Dプリンターを研究室や実験施設に導入することで、機器や器具の自作や複製、カスタマイズを手軽かつ効率的に行えます。

BMF Japan株式会社の「microArch®シリーズ」は、独自開発のPµSL技術(マイクロ3次元リソグラフィ技術)に基づき、2μm/10μmの優れた光学解像度と、±10μm/±25μmの正確な公差制御を実現し、「0.01mm~100mm」の範囲で精密な3次元微細加工が可能な3Dプリンターです。
実験用や研究用機器や器具の用途で3Dプリンター導入をご検討の際は、化学や研究領域での活用事例も豊富なBMF Japan 株式会社にご相談ください。

 

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