RNDR Medical社は、米国ケンタッキー州に本社を置き、100年以上の経験を持つ先端医療技術企業で、循環器、泌尿器、末梢血管、腹腔鏡関連の医療機器、および医療製品ライン構築のためのエンジニアリングサービスを中心に、統合医療技術およびサービスを提供しています。
射出成形による製造の課題
RNDR Medical社は、新しい使い捨て尿管鏡(Ureteroscope)を開発しています。 この製品は、腎結石(Kidney stones)や尿路上皮がん(Urothelial carcinoma)などの尿路系疾患を直接撮影することで医師の診断や治療に役立てることができるだけでなく、腎盂や腎臓の患部に薬剤を投与する腹腔鏡検査にも使用することが可能です。このような内視鏡には、直接撮影可能な高精細カメラと照明装置、そしてレンズのセルフクリーニング用の液体輸送チャネルが含まれています。 また、腎結石治療に用いつ結石破砕用ファイバーや回収用バスケットを配置できるマイクロサージェリー用のチャンネルも備えています。
この内視鏡の重要な構成要素のひとつが、ヘッドに位置するエンドソケットです。カメラチップ、照明システム、セルフクリーニングシステムなどのキーコンポーネントは、すべて直径が僅か3.3mmのエンドソケットに組み込まれています。 また、患部から内視鏡内部に液体が入るのを防ぐ必要があり、密閉性を確保するために非常に高い公差管理が要求されます。さらに、内視鏡の先端部が人間の組織を傷つけないような設計も必要となります。これほど複雑な構造と厳しい公差が要求されるエンドソケットの製造は、通常ニッチマイクロモールディングで実現されますが、従来の方法では、非常に高価な金型を事前に製作する必要がありました。 しかし、この製品の需要量は年間数万台に過ぎないため、ROI(投資対効果)は非常に低くなります。
▎BMF社製の内視鏡エンドシート(黄色)とマイクロ射出成形による内視鏡エンドシート(黒)
マイクロ射出成形に代わるPμSL技術(3D積層造形)
RNDR社のチーフコンサルタント兼パートナーであるAnthony Applingと工業デザイン部長のKeith Wellsは、高価で長い時間を要するマイクロ射出成形に代わるものを探していました。 そしてBMF社(ボストンマイクロファブリケーション)の独自のPμSL技術(3D積層造形技術)を知りました。2μm/10μmの光学解像度と±10μmと±25μmの公差であれば、より良いソリューションになる可能性は十分にあると判断したのです。
製品の初期設計段階において、BMF社はRNDR Medical社がこれまでにないスピードで設計反復をサポートしました。 従来、高額な機械加工で試作を数回行ってから最適な設計を選択し、その後、より高価でリードタイムが長いマイクロ射出成形工程を行ってきましたが、現在、BMF社の独自3Dプリント技術により、より速くより柔軟な加工ソリューションを提供し、設計反復のコストと生産サイクルを最小限に抑えることができました。
AnthonyとKeithによると、BMFのプリンターによって最終製品を完成するまでの期間を50%以上短縮し、数ヶ月から数週間、あるいは数日にまで繰り返しの作業を減らすことができたと言います。まさに指上のサイズで超高精度な造形を実現でき、しかも生体適合性を備えた材料も選択できることで、設計者に大きな自信を与えるだけでなく、シミュレーション環境で前臨床評価を行うことも可能になると述べています。
▎使い捨て内視鏡エンドソケット
3Dプリント技術の将来性について
RNDR社は、BMF 社の3Dプリンターで一度に500 個以上の内視鏡エンドソケットを製造できることを実証しました。これは製品の初期小ロット・試作に最適で、初期設計とその後の大量生産の新たな架け橋の役割を果たすと述べています。また、低侵襲手術の市場拡大に伴い、本案件のように、カメラ、照明、洗浄ジェット、手術用ロボットアームなどの小型機器をこの直径3.3mmの内視鏡内に配置することができるような様々な種類のカテーテルや内視鏡医療機器の開発は、より高い機能で小型なものに加速していくと言います。
医療機器のエンジニアにとって、この小型化・多機能化の流れは、従来の機械加工やマイクロ射出成形の能力の限界をすぐに超えることになります。特に、極端に薄い壁面を含む特殊構造物の製造では、従来の加工方法の限界が顕著に現れます。しかし、精密な3Dプリント技術を使えば、エンジニアは従来の方法による思考の制約から解放され、製品開発により大きな可能性をもたらすと期待されます。
BMFのPµSL 技術や3Dプリントについての詳細をお知りになりたい方は、ぜひご連絡ください。