【目次】
- 1. 医療機器市場の特徴
- 2. 医疗器械商业化流程
- 3. 医療機器開発において3Dプリンタが注目されている
- 4. BMFの高精度3Dプリンタによる医療機器開発の例
- 5. 医療機器の開発プロセスとは?まとめ
近年、精度が必要とされる医療機器の開発においても、高精度な3Dプリンタの適用が進められています。国内の医療機器企業が新たな製品を開発し事業を拡大していくためには、事業化における注意点を把握しつつ、自社のコア技術を活かした競争力のある製品を開発することが必要です。
この記事では、医療機器市場の特徴や基礎研究から臨床に至るまでの事業化に関する情報に加え、医療機器への3Dプリンタの適用例を紹介します。
1. 医療機器市場の特徴
先進国の高齢化、途上国の人口増加や経済発展などによって医療機器市場は世界的に拡大し続けています。医療機器の世界シェアについて、日本の医療機器メーカーのシェアは限定的です。例えば、軟性内視鏡はほぼ100%のシェアですが市場規模は主要な医療機器と比較してそれほど大きくありません。市場規模の大きい超音波診断装置やMRIなどは、20%~30%程度のシェアです。
また、放射線治療装置や人工呼吸器、人工関節などの治療機器のシェアは5%以下であり、国際競争力が弱い状態です。
事業拡大に向けたM&Aの重要性
国内の医療機器メーカーが売上を伸ばすためには新たな医療機器の開発が有効な選択肢となります。しかし、自社で扱っている製品の延長ではない新たな製品の開発はリスクが大きく、また大企業の場合にはスピーディーな開発が難しい状況です。リスクを下げつつスピーディーに新たな製品を事業に加えるためには、M&Aによる事業の拡大が有効です。
実際に、世界でもTOP3に入るような外資系の医療機器メーカーでは、医療機器に適用できる優れた技術を持つスタートアップ企業を積極的に買収することで成長を加速させています。
米国と日本におけるスタートアップの設立状況
米国では、将来的にM&Aの対象となり得る医療機器スタートアップが年間300社程度設立されています。一方で、日本国内では年間20社程度にとどまっており、大手企業がM&Aで事業拡大をしていきたかったとしても、M&Aの対象となるスタートアップ企業が少ない状況です。
日本国内の医療機器業界を活性化させ、市場規模が大きくシェアを一定程度確保できる製品を生み出すためには、国内スタートアップ企業の設立を促していくことが効果的です。
2. 医疗器械商业化流程
在这里,我们将回顾医疗器械的商业化过程,这对于增加日本初创企业的数量是必不可少的。
根据《医工合作医疗器械商业化指南》的规定,将医疗器械的商业化过程分为基础研究、产品开发、非临床和临床的分类。
基礎研究
医療機器の事業化を失敗しないようにするためには、基礎研究段階で臨床ニーズを的確に捉えられているのか、また医療機器としての規制・資金を考慮し実現性があるのかを精査する必要があります。
臨床ニーズと市場の見極め
ニーズを捉え損ねていると、自社のコア技術を活かす形でニーズを製品化した際に、想定よりも需要が少ない状況に陥ります。さらに、規制を満たすために想定以上に資金や時間が必要になるでしょう。
これらも考慮して、自社が持つコア技術を元にした開発戦略や資金回収プランを立てておくことが重要です。
また、的確に捉えた臨床ニーズを解決できるアイデアを組み立てた際には、競合技術に対する優位性や先行特許の有無を確認し抵触していないことを確認した上で、研究開発を実施する体制を構築します。構築したアイデアをビジネスモデルとして成立させるためには、市場を適切に見極める必要があります。
製品を適用する疾患や症例の想定、対象患者数や製品を適用する市場の規模、競合先分析や競合機器との比較が必要です。
事業化に向けた準備
製品開発後に販売を拡大していくためには、基礎研究段階で販売・物流についても検討しておきましょう。
例えば、学会や展示会などへの出展、適切な提携先との協力検討が選択肢となります。医療機器の事業化は投資回収までに長い期間が必要になるため、あらかじめ綿密に事業収支を検討しておくべきです。事業化を検討する際には、開発フェーズに合ったパートナーを見つけましょう。
パートナーには、アイデアを検討する医療機関、大学、コーディネータなどが考えられます。
製品開発
製品開発フェーズでは、試作品を用いて製品アイデアの根幹となる各要素技術の機能確認や検証、リスク分析を十分に行います。その結果を反映し、最終的に臨床現場で使用できる製品仕様を決定していきます。
製品設計と安全性の確保
開発する製品が医療機器であることを踏まえ、適切な品質・有効性・安全性に関する評価結果を得られるように綿密な計画を立てましょう。特に、危険性を完全に排除できない場合には、許容される範囲内に収まるようにリスクマネジメントを実施することが重要です。
また、機器の特徴に合わせて滅菌や放射線、併用機器との安全な接続、組み合わせて使用することで性能低下や不都合が生じないように仕様を検討する必要があります。
使用者が多岐にわたる機器を開発する場合には、使用者が適切に操作できるように、誤操作が起きにくい設計を行うべきです。
事業化に向けた戦略
事業化に関しては、改めてビジネスモデルの構築に関する検討を行い、十分な収益性が得られるように見通しを立てる必要があります。特に、治療系の機器の場合には医師に試作品を使用してもらい意見を収集すると共に、医師向けの研修の場などを計画します。
基礎研究段階で立てた知財戦略の見直しを行い、関係者を含めて知財戦略を誰が主導し検討体制をどう構築していくのかも計画しましょう。
また、扱う医療機器によっては許認可に関する対応、事業に必要な人材の育成や確保、薬事戦略の構築などを行う必要があります。
非臨床
非臨床フェーズでは、臨床試験の実施に向けて非臨床段階で実施する内容を明確にする必要があります。ビジネス面では、改めて上市後のコストを考慮した収益計画を立て、関係企業とのメリットが一致することを明確にします。
さらに、知財戦略は適宜修正を行い法規制対応に十分に考慮した上で製品販売許可を取得しましょう。
臨床(治験・臨床研究)
臨床段階では、必要に応じて治験を行います。治験は自社単独で実施するだけでなく、治験の代行やサポートを行うCROを活用することも検証しましょう。
事業化の観点では、ユーザーや患者の声をできるだけ把握し、製品使用ケースや有効性に関する情報を集め、製品を普及させるためのマーケティングに活かしましょう。
3. 医療機器開発において3Dプリンタが注目されている
このように、新たな医療機器を開発する際には各プロセスにおいて技術開発、知財戦略、法規制などに関するさまざまな検討・対応が必要です。また、事業化までに時間がかかる医療機器の開発において、自社が持つコア技術を製品開発に活かすためには試作品製造などのプロセスを効率化しなければ競争力を確保できません。
近年は、医療機器の開発において、試作品の開発や製造の効率化、競争力確保のために複雑な形状の実現や低コスト化を実現することが求められています。そのために、医療機器の開発に対する3Dプリンタの適用が期待されています。
4. BMFの高精度3Dプリンタによる医療機器開発の例
BMFでは、3Dプリンタの実用化が進むなか、PµSL(Projection Micro-Stereolithography)と呼ばれる、独自の光造形技術を開発。PµSL技術は、医療機器の開発において、試作品の開発や製造の効率化に注目されています。
BMFの超高解像度3Dプリンタによる、医療機器の造形例をご紹介します。
医療用pHセンシングパッチの造形例
マイクロニードル・ベースの比色pHセンシング・パッチの製造工程の説明図
(a)pHセンシングパッチの製造に使用されるさまざまなコンポーネントの図、(b)マイクロニードルアレイベースのpHセンシングパッチの段階的(i-vi)製造プロセスのリアルタイム画像、(c)完全に組み立てられたpHセンシングパッチの上面図と底面図
出典:https://doi.org/10.1016/j.microc.2024.110350
ノースカロライナ大学のバイオメディカル工学研究チームは、BMFの高精度3Dプリンタを活用し、pHセンサーや間質液抽出装置、5-HTセンサーなどの先端デバイスを開発。特に、マイクロニードルベースの比色pHセンシングパッチは、食品の品質管理や創傷の状態監視に活用される新たなソリューションとして注目されています。
高精度な造形により、従来技術では実現困難だった微細構造の製造が可能となり、医療・食品安全分野の革新を加速させています。
マイクロニードルの造形例
BMF の3DプリンターMicroArch S230によるマイクロニードルアレイ。針側壁にΦ25µmの流路が設置され、隣接針間最小距離は50um
マイクロニードルは、薬物輸送や生体センシング、組織サンプリングなどに利用される微細デバイス。従来はシリコンや金属、ポリマーを用いたMEMS技術で製造されていましたが、BMFの高精度3Dプリンタにより、ポリマーやセラミック製の複雑な微細構造を一体成形で精密に造形可能に。
高解像度・高精度な造形により、個別の治療ニーズに対応するカスタマイズが容易になり、マイクロニードルのさらなる応用拡大が期待されています。
創傷治療用マイクロニードルパッチの造形例
サンゴにヒントを得たHepMi-PCLマイクロニードルパッチとその創傷感染治療過程
慢性創傷感染症は診断や治療が難しく、適切な処置が遅れることが課題となっています。これに対し、BMFの高精度3Dプリンタを活用し、サンゴ構造を模倣したマイクロニードルパッチ開発が進んでします。
抗生物質とヘパリンを組み合わせた二重療法により、細菌感染の抑制と炎症の軽減を実現しました。ラットの創傷モデルにおいて高い治癒効果が確認されており、臨床応用への可能性が期待されています。
低侵襲手術用自動縫合器の造形例
BMFは、英国Sutrue社と提携し、低侵襲手術用自動縫合器の開発を支援。BMFの高精度3Dプリンタを活用することで、試作時間とコストを削減しながら、設計精度と機能性を向上させました。これにより、外科医の負担軽減や手術精度の向上が可能となり、患者へのより良い医療サービスの提供が実現。
Sutrue社の自動縫合器は、手術時間の短縮と医療現場の効率化に貢献しています。
ナノ・マイクロファブリケーション向け3Dプリンターの造形例
マイクロニードルアレイ
BMFは、ジョージア工科大学の電子工学・ナノテクノロジー研究所と提携し、BMFの高精度3Dプリンタを導入。
既存のナノスケール装置では対応できなかったマイクロ造形技術を補完し、研究者向けに高精度な微細加工環境を提供。200種類以上の装置が揃うクリーンルーム施設と組み合わせることで、生命科学やナノテクノロジー分野における最先端研究の加速が期待されています。
薬物運搬マイクロスフェアの造形例
BMF技術を用いて製造されたマイクロスフェア(直径約80μm)
BMFは北京大学と共同で、薬物運搬マイクロスフェアの製造技術を開発。従来の製造法では粒径の制御が難しかったマイクロスフェアを、BMFの高精度3Dプリンタとマイクロ流体デバイスを用いることで、均一な粒径での量産を実現。
これにより、がん治療や疼痛緩和などの医療分野において、標的性と徐放性に優れたドラッグデリバリーシステムの実用化が加速し、新たな治療選択肢の創出に貢献しています。
5. 医療機器の開発プロセスとは?まとめ
今回は、医療機器の事業化開発プロセスと3Dプリンタの適用について紹介しました。
医療機器の開発を事業化するためには、さまざまなプロセスを乗り越える必要があります。知財戦略や法規制など実施すべき項目が多くあるため、試作品開発部分を効率化し自社のコア技術を最大限に活かすために、3Dプリンタの活用が効果的です。